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妊娠を考えたら知っておきたい「ビタミンD」の重要性 ― 不妊・流産・赤ちゃんの将来の健康との深い関係 ―

妊娠や出産を考えるとき、多くの方が葉酸の重要性は耳にしたことがあると思います。一方で、「ビタミンD」については、まだ十分に知られていないのが現状です。

しかし近年の研究から、ビタミンDは不妊治療の成績、妊娠の成立や維持、さらには赤ちゃんの将来の健康にまで深く関わっていることが明らかになってきました。この記事では、妊娠前から意識しておきたいビタミンDの役割を、できるだけわかりやすく解説します。

妊娠を考えたとき、見落とされがちな「栄養の土台」

日本では、20〜30代女性の約2割がBMI18.5未満の「痩せ」に該当するとされ、低出生体重児の割合も増加傾向にあります。妊娠中だけでなく、妊娠前からの栄養状態(体づくり)が大切、という考え方が近年広がっています。

妊娠初期の栄養は、赤ちゃんの将来にも影響する

妊娠初期の栄養状態は、赤ちゃんの将来の健康に長期的な影響を及ぼす可能性があります。これをDOHaD(成人病胎児期発症起源説)と呼び、妊娠中の体重だけでなく「妊娠前からの栄養管理」が重要だと考えられています。

ビタミンDは「骨のため」だけではありません

ビタミンDは骨を丈夫にする栄養素として知られていますが、実はそれだけではありません。免疫バランスの調整、神経・筋肉の働きの維持など、全身のさまざまな機能に関与しています。

ビタミンDは日光から作られる

ビタミンDの特徴は、食事よりも日光(紫外線)を浴びることで体内で作られる割合が大きい点です。紫外線対策が一般化した現代では、世界的にビタミンD不足が問題になっています。

不妊・流産とビタミンDの関係

妊娠を希望する方では、血中ビタミンD(25(OH)ビタミンD)の目標として30ng/mL以上が望ましい、という考え方が示されています。

ビタミンD不足は、不妊、流産、卵巣機能低下(AMH低下)、妊娠合併症(妊娠糖尿病・妊娠高血圧症候群など)のリスク上昇と関連する可能性が報告されています。

「欠乏」レベルでは流産・不育のリスクが上がる可能性

特に20ng/mL未満の欠乏状態では、流産率が上がる、不育症のリスクが高いとする報告もあります。ただし、個人差があるため、数値は目安として捉え、医療者と相談しながら評価することが大切です。

卵巣機能・PCOSとビタミンD

ビタミンDは卵巣内で卵子の成熟に関わり、卵巣予備能の指標であるAMHの維持とも関連する可能性が示唆されています。卵巣機能が低下している方では、補充によりAMHが改善したという報告もあります。

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)では排卵・妊娠率が改善する可能性

PCOSの方では、ビタミンD補充が排卵率や妊娠率の改善と関連したというメタ解析データも報告されています。すべての方に同じ効果が期待できるわけではありませんが、治療の選択肢を考える上で一つの参考になります。

着床・不育症と「免疫のバランス」

妊娠は、母体が胎児(遺伝的には半分が父親由来)を受け入れる、特殊な免疫状態です。ビタミンDは免疫系に働きかけ、拒絶反応を抑える方向(免疫寛容)へバランスを整える可能性が示されています。

免疫寛容(Th2/Treg優位)を促し、妊娠維持を助ける可能性

研究では、ビタミンD濃度が低いと免疫バランスが妊娠維持に不利な方向へ傾く可能性が示唆されており、着床不全や不育症のリスク低減につながる可能性が注目されています。

妊娠中〜赤ちゃんの将来への影響

妊娠中のビタミンD不足は、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、胎児発育の問題などとの関連が報告されています。また、妊娠中・新生児期のビタミンD不足が、子どもの喘息や自己免疫疾患、神経発達の課題などと関連する可能性も示されています。

こうした点から、妊娠が分かってからではなく、妊娠前から整えておく「プレコンセプションケア」が大切だと考えられています。

サプリメントは「自己判断」が一番危険

ビタミンD補充は有用な場合がありますが、血中濃度を測定した上での調整が基本です。1000IU/日を数か月摂取しても目標値に届かない方がいる一方で、過剰摂取のリスクもあります。

目安(一般的な考え方)

  • 20〜30ng/mL:1000IU/日を目安
  • 20ng/mL未満:2000IU/日を目安

※あくまで一般的な目安です。服薬状況や体質、腎機能などにより調整が必要な場合があります。2〜3か月後の再検査も含め、医師と相談して決めましょう。

ビタミンD単独より「マルチビタミン」を検討する考え方

ビタミンDだけでなく、葉酸代謝に関わるビタミンB群(B6、B12など)を含むマルチビタミンのほうが妊娠成績を改善する可能性が示唆されています。葉酸は神経管閉鎖障害のリスク低減に重要で、妊娠前からの摂取が推奨されます。

注意したいサプリメント

インターネットで話題のサプリの中には、妊娠に悪影響を及ぼす可能性が示唆されるものもあります。例として、レスベラトロール(いわゆる“アンチエイジング系”)や高用量の活性型ビタミンAなどは、自己判断での摂取は避け、必ず医療者に相談しましょう。ビタミンAは、必要量を食事から、あるいはβ-カロテンとして摂るのが一般的に安全とされます。

まとめ:妊娠前から始める「プレコンセプションケア」

妊娠が分かってからではなく、妊娠前から体を整えることが、妊娠率の向上や合併症リスクの低減につながる可能性があります。ビタミンDはその中心的な栄養素の一つです。

気になる方は、まずは血中ビタミンD濃度を測定し、自分に合った補充方法を医師と相談しながら検討しましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療を代替するものではありません。症状や体質により最適な対応は異なります。心配な点がある方は医療機関へご相談ください。